「コンパクトシティ」から「道の駅」を拠点とした新しい都市へ

 
大船渡駅周辺にコンパクトシティーをつくる」(日経ビジネスオンライン、2012年11月12日、宮田秀明)*1より(下記)。メモ。

 コンパクトシティーを担当するBチームでは、「道の駅」が議論の大切な部分になってきた。

 ご存じの方も多いだろう。「道の駅」は全国に1000近くあって、観光客のための施設としてだけでなく、地域のコミュニティー拠点としての価値が高まってきている。震災以降は防災拠点としての価値も強調されるようになってきた。

 「道の駅」の規模はいろいろだ。駐車場が10台の小規模なものから、500台を収容できるものまである。レストランも様々だ。麺類中心の簡単な飲食店から高級フレンチ料理を提供するものまである。設備も多様で、温泉、ホテル、博物館、野菜や魚介類の直売所などいろいろである。一言でいえば「何でもアリ」なのだ。

 成功して賑わっている「道の駅」とそうでない「道の駅」の二極分化も明確である。この方面に詳しい方によると、いちばん成功しているのは妙高市の「道の駅あらい」だそうだ。この「道の駅」はビジネスホテルも併設している。

 昨年の5月、企業の方々と東大の研究室の私たちが、陸前高田市を例題として、復興のプランを議論した。この時、ヨーロッパモデルの「連結型コンパクトシティー」の案が出た。高台に移転する住宅地をコンパクトシティーとして建設する。このコンパクトシティーを連結して機能を高めようというものだった。コンパクトシティーは、住居や商業施設などをあちらこちらに分散させるのではなく、ある地域にコンパクトにまとめて機能を高める街のことである。特に高齢化社会に適している。

 しかし、この案は現実と乖離していることが明らかになった。高台に住居を移転するための立地調査を大船渡市陸前高田市が行ったところ、高台にまとまった用地を確保することが難しいことが分かった。小規模なところで10戸、大きくても200戸程度の町にしかならないのだ。これではコンパクトシティーにならない。(続く)

(「道の駅」に関しては、 「道の駅と地域の内発的発展」(北海道教育大学旭川校、2006年、松谷岬、→PDFファイル)を参照。良い論文です。)

■ 商業施設と道の駅の相乗効果を図る

 そこで今年になって大船渡市は方針を転換することにした。商業コンパクトシティーを町の中心に建設することにしたのだ。第1号を大船渡駅周辺地域とした。大船渡市の賑わいの中心は、JR大船渡線の終点、盛駅と、ひとつ手前の大船渡駅の周辺である。このうち大船渡駅周辺は被災し、今は広大な空き地になっている。面積は約39ヘクタールある。ここにコンパクトシティーを建設する案が浮上したのだ。

 4月、大船渡市を視察に来られた当時の前田武志国交大臣は大船渡駅の跡地に立ち寄り、国として強力に支援することを約束した。国の津波復興拠点整備事業を活用することも決まった。大船渡市は、この8月、大船渡駅周辺の約4ヘクタールから建設を開始すると発表した。気仙広域環境未来都市の象徴的な場所になることが予想される。

 大船渡市はこの4ヘクタールの敷地の中には商業施設と公共施設のほかに「道の駅」を計画している。このコンパクトシティーの成功の鍵のひとつは「道の駅」になりそうだ。「道の駅」は観光地へのアクセス拠点であるとともに、地域のコミュニティー拠点にも防災拠点にもなる。(後略)

ま、大ざっぱに言えば、最初の「コンパクトシティ」の案は事実上却下されてw、被災した中心市街地(大船渡駅周辺)を、今日の「車社会化」(モータリゼーション)に対応した都市構造につくり替える(車利用者を想定した「道の駅」を鉄道駅周辺につくる)案に変わった、という記事ですね(ははっw)。でも、“現実的”なとても良い案になったと僕は思います。大船渡市の未来に明るい“希望”が持てる、素敵な案だと思います。

関連して、(僕の)別ブログの「Transit City (Integral Project-3)」の記事(「「鉄道的リアリズム」(鉄道利用者)の空間と「自動車的リアリズム」(車利用者)の空間それぞれの中心を再び結合する」)と、(僕の)別ブログの「Kinkyo-2」の記事(大型商業施設の「ラゾーナ川崎」は「川崎駅に直結していながら2000台の駐車場がある」)と、(僕の)別ブログの「イオンレイクタウン」の記事参照。

あと、本ブログの「医療と高齢化と中心市街地の再生――高松丸亀町商店街C街区」の記事(「高松丸亀町商店街」は、「既存の商店街を「ショッピングモール(のような場所)」に造り変えている」)と、本ブログの「【続報】「中心市街地」対「大型SC」――秋田市」の記事で引用した、「交通史観が示唆する市街地活性化の行く末」(大和総研、2010年7月14日、鈴木文彦)を参照。三度引用するとw、「(前略)底流には河川から鉄道へ、そしてバイパスを経て高速道路に至る主要交通路の変遷があった。(中略)根源的には、市街地の場所と在り様は交通手段で規定される」との事です。

Lady Gagaのマネージャーが考えるソーシャルメディアのこれから」(BLOGOS、2012年11月12日、Kenichi Nishimura)も参照。少し引用すると、レディー・ガガLady Gaga*2のマネージャーを務めるトロイ・カーター(Troy Carter)は、The Guardianが行なったインタビューで、「もう交通手段として馬*3を見る人はいないのであり、世の中は変化している。ビジネスはそれに対して適切に順応していかなければならない。(People don’t buy horses to ride around any more for transportation. I just think the world changes. As a business, we have to make the proper adjustments.)」と語っているとの事です。以上です。ではまた(ドタバタ)。


【追記(2013/4/26)】

未発育都市 @mihatsuikutoshi
日経ビジネス 「道の駅」が地方を救う―イオンでもセブンでもない第3の流通 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base1/index.html 買ったー。

未発育都市 @mihatsuikutoshi
ま、というか、中身よりも表紙が欲しかったw。この絵好きだー。 http://lighthill.exblog.jp/20315075/ pic.twitter.com/A8MehxPoHM

未発育都市 @mihatsuikutoshi
「全国に1000カ所もの“店舗”を抱え、来訪者数は年間延べ5億人以上。地方都市に大型SCを設けるイオンや、国内に約1万5000もの店舗を構えるセブンイレブンさえも立地しないような過疎地への出店がほとんどながら、合計3500億円もの売上高を誇る流通業がある。その名は『道の駅』。」

未発育都市 @mihatsuikutoshi
「道の駅によって支えられ、また道の駅を支えてきたのは、小規模な生産者たちである。現在、9割程度の駅が直売所を設けている。駅は農漁業が盛んな地域に多いため、(略)道の駅では近隣の農家や漁師、食品加工業者らが商品を持ち込み、駅や施設に委託して販売する仕組みが一般的だ。」

未発育都市 @mihatsuikutoshi
「売値は生産者が決めて、十数%を手数料として駅の運営会社に支払う。卸や商社を介さず、物流費もあまりかからない。そのため、多くの道の駅では新鮮な野菜や果物が、都市部の食品スーパーよりも、はるかに安い価格で売られている。」

未発育都市 @mihatsuikutoshi
「生産者によるマーケティング視点をもたらしたことが道の駅の功績」「消費者に鍛えられた生産者の中には、道の駅と組んで商品を海外に輸出しようという意欲的な動きもある。」「1000万円以上稼ぐ漁師が続々」

未発育都市 @mihatsuikutoshi
「都会に働きに出ていた漁師の子供らが後を継ぐため戻るケースも増えたという。漁師が安定的に「稼げる」仕事になったからだ。以前は市場や企業に買い叩かれていた「弱者」である第1次産業従事者が、道の駅で生計の場を得た。」

未発育都市 @mihatsuikutoshi
「福岡県宗像市の道の駅「むなかた」の売りは鮮魚である。」「むなかたは今後、加工品製造のための工場も建てる。道の駅は地方に産業まで生み出しているのだ。」 (※道の駅むなかた http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%93%E3%81%AE%E9%A7%85%E3%82%80%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%9F

未発育都市 @mihatsuikutoshi
「本誌はこの「道の駅モデル」こそ、地盤沈下の止まらない日本の地方を再生する切り札になると考える」「最終消費者の顔が見える直販ルートを手に入れたことで、生産者の意識は大きく変化。市場に農産物を出荷するだけでは気づかなかった消費者のニーズを考え、次々に独自産品を生産するようになった」

未発育都市 @mihatsuikutoshi
以上。日経ビジネス 「道の駅」が地方を救う―イオンでもセブンでもない第3の流通 http://business.nikkeibp.co.jp/nbs/nbo/base1/index.html からの引用でした。(終わり)

*1:大船渡駅周辺にコンパクトシティーをつくる」(日経ビジネスオンライン、2012年11月12日、宮田秀明)のYahoo! リアルタイム検索も参照。少し引用すると、「うがった見方だとは自覚してるんだけど…何だか被災地がひと山当てようとする人たちの草刈り場になってないかとふと疑心暗鬼になる。」(unamu_s)、「イイね、実現して欲しいな!」(kyoheism)、「道の駅にマイクログリッド・・・、コンパクトシティの方向性がなんか違うように思うのは僕だけでしょうか?単に新しい商業施設を作ろうとしているだけのような気が・・。」(kazu_jijineko)、「おお! 」(yohx)、「あの駅周辺に作ることを皆是としてるんだろうか。。」(ko31)、「道の駅はいいけど、鉄道の駅・・・は・・・?」(luisama1999)、「大船渡はセメントシティだから、そこになければならない理由が比較的しっかりしてるから、ありかもな。」(gelsy)等々の感想がありました。賛否両論あるようです(うーん)。あと、一応、最後の「大船渡はセメントシティだから」に関しては、ウィキペディアの「大船渡市」の項から少し引用すると、大船渡市の「主要な産業のひとつは水産業であり、市の沖合いには、「世界三大漁場」ともいわれる北西太平洋海域(三陸漁場)となっている。(中略)また、市内各地に石灰石鉱山があり、大船渡湾奥には太平洋セメント大船渡工場がある。」との事です。

*2:(僕の)別ブログの「九州新幹線全線開業」の記事参照(レディー・ガガ、→動画

*3:本ブログの「写真でみる田園都市レッチワースの移り変わり」の記事参照(「馬」、「馬車」、「乗合馬車」)