超水平と超垂直

「ギズモード・ジャパン」の「世界1高いビルKingdom Tower、完成すればその高さ1キロ!」(2011年8月5日)によると、「現在世界1高いビル828メートルのBurj Khalifa(→動画動画*1)をぐんと抜いて、10年後くらいに1位になろうとしているビルがあります。その名もKingdom Tower。今まではぼんやりとしたラフスケッチのみが公開されていましたが、このたび完成予想図(下図)が初お目見え。建設場所はサウジアラビアジェッダ紅海の近くです。(後略)」との事です。「1kmとんがってます。世界一高いビル「キングダムタワー」最新イメージ」(ギズモード・ジャパン、2011年8月13日)、「World’s Tallest Skyscraper」(Archdaily、2011年8月2日)も参照。

その完成予想図です。どーん(!)。

縦長い(ワラ)。

うーん。前に(僕の)別ブログの「イオンレイクタウン」の記事で、「イオンレイクタウン」(2008年開店)のパノラマ写真(→写真、下図)があまりにも横長い(水平に広い)ので、「(´・д・`) こ、これは見づらい。」と書いた事を思い出した(ワラ)w。ちなみに、「イオンレイクタウン」の全長も大体1キロです。*2

大型商業施設(ショッピングモール)が「水平に広い」形をしているのは人間工学的に正しいのだけど*3、上記のような超高層ビルには「目立つ」(新世界のアイコンとなる)事以外の理由はない*4。もちろん、都市の中心に「目立つ」建造物(ランドマーク)があるという事は、ケヴィン・リンチ著「都市のイメージ」(1960年)でも重要な分析の対象であったし、2012年に開業予定の「東京スカイツリー」(高さ634m)が元々の目的(電波塔である)以上の波及力を有しているという事は今更ここで言及するまでもないでしょう(→動画動画)。

でも、前に(僕の)別ブログの「Integral Project-2」の記事で、「20世紀初頭のニューヨークが「針と球」であれば、21世紀の世界は「水平と垂直」の弁証法の時代かも知れません。」と書いて、「コールハースニューヨーク世界博(1939年)の「針と球」の分離に、マンハッタニズム(無意識、純粋にして思考なきプロセス、→動画)の終焉を見て取りましたが、21世紀初頭の(中略)「水平と垂直」に分離(中略)も何か物語っているかも知れません。」と書いた事のような、何かの「終焉」を僕は感じずにはいられない。つまり、都市空間における「水平と垂直」の分離は、前に(僕の)別ブログの「雑記6」の記事で書いたような、「経済格差」の問題や「中間領域」の消失の問題の表れではないか、また更に、それらの問題は、やがて僕らに降りかかる火の粉となるのではないか、という事です。

ま、この辺の「都市と経済」、または「都市と政治」の関係については以前から(僕なりに)真剣に考えているのだけど、都市思想家のジェイン・ジェイコブズが(1961年に出版された)著書「アメリカ大都市の死と生」(2010年、新訳)で、「都市とは徹底して物理的な場所です。そのふるまいを理解しようと思えば、(中略)実体的かつ物理的に起こることを観察して有益な情報を得ることです。」(P.116)と述べているように、都市空間を「徹底して物理的」に捉えるという視点が重要でしょう。でも最近、ま、これは東日本大震災の影響なのだろうけど、都市に関する言論で、「コミュニティ」(とか)に偏重した精神的(心理的)な言論が、かなり増えているような気がします。ちなみに、ジェイン・ジェイコブズは同書で、「近隣というのは、バレンタインのような響きを持つに至ったことばです。感傷的な概念としての「近隣」は都市計画にとって有害です。それは都市の暮らしを、町や郊外の暮らしへと歪めてしまう試みにつながります。感傷性は、まともな判断のかわりに甘ったるい善意に働きかけるのです。」(P.134)とも述べています。過度な「コミュニティ」論は、都市計画にとって有害です。一方、ジェイン・ジェイコブズは他人に対して過干渉しない都市的な人間関係のバランス(都市的コミュニティ)に価値を置いています。よって、都市の物理的な場所(例えば「街路」)が重要であると論じているのです。*5

うーん。話が逸れたけど、以上ですw。

【おまけ】

冒頭の「ギズモード・ジャパン」の「世界1高いビルKingdom Tower、完成すればその高さ1キロ!」(2011年8月5日)の記事にある画像です。一番左があの「キングダムタワー」(高さ1000m以上)で、その右隣がドバイの「ブルジュ・ハリファ」(高さ828m)です。そして、その隣は前に(僕の)別ブログの「別世界性」の記事で載せた、(僕が描いた)「アイコン建築」の「SKYEY PROJECT」(高さ610m)です(こらこらw)。その右横の黒線はパリの「エッフェル塔」(高さ324m)です。あと一応、その記事でも書いたけど、「SKYEY PROJECT」のコンセプトは、「(前略)建築の形態論(表現論)の可能性が今回の主題です。基本は、babyismの「Integral Project-2」で書いた「建築の『水平と垂直』の弁証法」で、3つの超高層ビルは「垂直」を、円錐はニューヨーク世界博(1939年)の「針と球」を合成した形で、これを横に向けることで「水平」を動的に強調しています。」です。ま、この「SKYEY PROJECT」の「高さ610m」がどれくらいなのか、ちょっと確認しておこう、と思ったというだけですw。

それと、「キングダムタワー」と「ブルジュ・ハリファ」は、どちらも尖塔型(下層階の床面積は広く、上層階は狭い)です。これは構造力学的に安定した(倒れにくい)形です。また更に、前者の「キングダムタワー」では、下層階にはオフィス、真ん中の階にはホテル(コンドミニアム)、上層階には住宅の用途がそれぞれ割り当てられているのだけど、前に(僕の)別ブログの「Googleplex & iSpaceship」の記事の注釈1で、「高層オフィスビルでは基準階の面積(1フロアあたりの面積)は広いほうがいいとされている」と書いた事と、前に(僕の)別ブログの「Integral Project-2」の記事で、「大型商業施設では「低層で水平に広い建築」のほうが良いと(中略)書きましたが、これとは逆に、個々で独立していて水平方向の連続性をあまり必要としない用途、とくに住宅の場合では、建築形態は「垂直」になるのではないか」と書いた事の両方とぴったり合致している、とも言えるのです。超高層ビルでの尖塔型の建築形態には、(構造力学的にも建築計画的にも)合理性がある、という事です。ひょっとしたら、これは建築の新しいプロトタイプ(基本型)になり得るのかも知れないと思って、後者の「ブルジュ・ハリファ」を調べてみたら、下層階にホテルと住宅で上層階にオフィスでした、真逆でした(ワラ)。意味が分からない。

以上です。ではw。

(ま、そもそも超高層ビルを建てる理由は「目立つ」(新世界のアイコンとなる)事なのだから、前に(僕の)別ブログの「麦わら帽子とモンパルナスタワー」の記事で載せた、(僕が描いた)「アイコン建築」の「麦わら帽子とモンパルナスタワー」(高さ210m+α)や「帆船の高層ビル」(高さ200〜250m)のように、記号(アイコン)の力を積極的に使うという選択肢もある。)

*1:(僕の)別ブログの「ハイブリッド世界の本質」の記事参照(「中東のドバイ(→動画動画)」)。(僕の)別ブログの「麦わら帽子とモンパルナスタワー」の記事参照(「どーん()」)

*2:(僕の)別ブログの「ドイツの田園都市」注釈14の記事参照(「水平と垂直」)

*3:(僕の)別ブログの「Integral Project-2」の記事参照(「19世紀に発明されたエレベーターエスカレーター等の昇降機で連結される空間よりも、古来からの「低層で水平に広い建築」のほうが買い物には適している」)。(追記。(僕の)別ブログの「沖縄」の記事参照(「ジャスコハフモデルの数式を使用する。」))

*4:(僕の)別ブログの「生ぬるい都市」の記事参照(「マンハッタンスカイラインは、いまでは世界中から模倣されています。世界の田舎と思えるような都市に行っても、やりたいのは「花たば(ブーケ)」と呼ばれる超高層群の開発です。そのシルエットはこのところ事件をおこしている金融工学理論の可視化だと言っていい。」、磯崎新

*5:一応、(僕の)別ブログの「Googleplex & iSpaceship」の記事も参照(「グーグルアップルも元は郊外の住宅の小さな「ガレージ」(中略)から始まった。ジェイコブズが讃えたような大都市の「街路」ではない。」)