体制維新――大阪都

ドタバタしております(汗)。前回の「ケインズvsハイエク」の記事で、「橋下徹 VS 平松邦夫 公開討論会 2011.11.12」の動画を載せて、「続きは今週末に観ます。」と書いたのだけど、まだ観ていません(ワラ)。と言うか、この動画は「1時間43分」もあってw、前に(僕の)別ブログの「ハイブリッド世界の本質-2」の記事の追記(と注釈3)で、「基本的に5分以上の動画はほとんど見ない」と書いたように、僕は長時間の動画を観る事がとても苦手です。と言うわけで、本を読もうと思って、本屋へ行ったら、丹下健三著「建築と都市―デザインおぼえがき」(復刻版、2011年)が目に入った。あ、この本に書かれている事は知っておかなければならない、と思って買おうとしたのだけど、前に(僕の)別ブログの「ハイブリッド世界の本質-2」の記事の追記で、「久繁哲之介著「地域再生の罠 なぜ市民と地方は豊かになれないのか?」(2010年)を買った。(中略)「コンパクトシティ政策」を批判している本らしいので、義務感(?)から買ったのだけど、うーん、読まないかも知れない(おいw)。」と書いて結局、読まなかったのでw、買うのをやめました。「知っておかなければならない」という義務感から買っても、僕は読まないでしょう(おいおいw)。

ま、念のため、パラパラと立ち読みはしたのだけど、この丹下健三の本で提案されている「東京計画1960」(1961年)*1に関しては、建築史家・建築家の藤森照信がこの本の巻末の「解説」で述べているように、ナンセンス(非現実的)な提案でしかないし、また、僕の都市論からみても、前に(僕の)別ブログの「Computer City」の記事で書いたのだけど、「丹下健三の「東京計画1960」は(線状都市ではなく)東京の同心円型構造の(東京湾による)欠落の補完であるということ」でしかないのです。でも、この本では、前に(僕の)別ブログの「機能から構造へ-2」の記事で、この時代(1960年前後)の「建築史上の流れは、「機能主義から構造主義へ」の流れに他ならない。」と書いたのだけど、その変化に関しては、その記事で引用した黒川紀章著「都市デザイン」(1965年)よりも、かなり詳細に論じられているようでした。うーん。やはり買っておくべきだった(汗)。そのうち買って読みますw。

では、本題。
橋下徹堺屋太一共著「体制維新――大阪都」(2011年)から少し引用しておく。(メモ書き)

(「大阪都構想」について)いまの大阪府庁も大阪市役所も解体して、新たな大阪都庁にする。そして大阪市内にある二十四区は中核市並みの権限と財源を持つ八区ほどの特別自治区に再編する、そして周辺市にも中核市並みの権限と財源を移譲するというものです。都は大阪全体の成長戦略や景気対策・雇用対策、インフラ整備などの広域行政を担い、特別自治区基礎自治体として、教育や医療、福祉といった住民サービスを受け持つことになります。
 世界は激しい都市間競争の時代になり、日本、特に都市部である大阪は著しい少子高齢化社会に突入します。このまま何もしなければ税収は減り続け、住民サービスは財源不足に陥り、大阪は衰退するのみ。そこで大阪の体制を変革し、大阪都によって大阪の都市としての活力・競争力を高め、大阪全体の経済成長を図り、加えて二重行政の解消という驚天動地の行政改革を達成することで財源を確保する。また特別自治区によって医療・福祉・教育サービスを充実させ、住民にやさしい都市を作るのが狙いです。(P.30)

 大阪府大阪市の「二重行政」の無駄を省きながら、大阪の成長戦略を実現して、大阪全体の経済成長を実現するのが目的です。そしてそのことによって、大阪全体の税収入を増大させるのが狙いです。
 これから大阪も少子高齢化時代を迎えます。このまま手を打たなければ税収は下がる一方。そして社会保障費は益々膨らみます。大阪全体の税収を上げ、行政の無駄を徹底的に省かなければ住民サービスは維持できなくなります。
 大阪全体の景気が上がれば、各市町村の税収が上がる。増税に頼らない成長戦略路線です。(P.162-163)

(前略)各特別自治区は、災害対応、児童虐待対応はもとより、一般的な土木事業、福祉事業を行うことができます。さらに保育所・高齢者施設の設置認可権を持ち、小中学校、図書館、体育館などを自らの判断で建設することができます。(P.174)

大阪都構想」とは、「広域行政」(広域行政体)と「特別自治区」(基礎自治体)の「二段組みの行政機構」(P.40)にする、という事です。少し関連して、本ブログの「廃県置藩――Abolition of the ken system」の記事参照(「二層構造」)。

 中央も地方も日本の行政機構は制度疲労を起こし、現在システムとして機能しなくなっています。今の行政機構の基礎は明治維新によって作られました。それ以来基本は変わっていません。明治から現在に至って世の中は激変しました。ところがシステムの根幹は明治のままなのです。現在の行政機構のシステムが機能しないのは当然です。
(中略)僕はまず大阪で現在の大阪に合う、機能する行政機構を作りたい。明治以来続いてきた行政機構を変えるというのはこういうことなんですよ、それは可能なんですよ、ということを実践して見せたい。少々大げさですが、「大阪都構想」によって、大阪府民のみならず多くの日本人に希望をもってほしいのです。(P.112-113)

 日本はいかなる道を進むべきなのか。世界経済がグローバル化するなかで、国全体で経済の成長戦略を策定するのはもはや難しいと僕は思っています。(中略)それよりも地域に応じた細かい成長戦略を描く必要があるのではないか、と僕は思います。永田町、霞が関が中心になって、日本全土一様の戦略でいこうというのは、時代錯誤です。
(中略)あらゆる分野のものごとを、永田町と霞が関で決めることに無理があるのです。日本全体が閉塞感に覆われている最大の原因はそこにあるのではないか。これだけ複雑化し成熟した日本という国において、行政が取り組むべき課題は数限りなくあります。そのすべてを永田町・霞が関で仕切ろうとすれば破綻して当然です。
 世界の先進国の例を見ても、成長戦略は国全体で考えるよりも、都市ごとに作る時代がやってきています。中央から命令を下すのでなく、中央は大きな国の方針を定め、都市部の地方組織をフル稼働させる。そして都市が作った戦略が実行できるよう、中央は必要であれば国のルールを変えていく。このような国家運営システムが国家戦略になっている。それが世界の潮流といっていい。
(中略)国の役割は、国の大きな方針を示すこと、各都市圏が策定した成長戦略が実行できるような法環境を整備すること、各都市圏が有機的に繋がるような仕組みを作ること、都市圏と地方部の経済格差を調整する仕組みを作ることでしょう。
 成長戦略の主体は都市であるべきです。(P.104-106)

 大阪の地域特性は、事業所や人口の集積状況、通勤圏、幹線道路・鉄道などの広域インフラ状況などを見れば明らかです。それらは大阪市の範囲を越えて、大阪府内のほぼ全域に広がっている。つまり、ヒト・モノ・カネの流れは府域全体に広がっているのです。
 かつて大阪のヒト・モノ・カネは大阪市内に集中していました。(中略)しかし今は、ヒト・モノ・カネが集まる地域がどんどん広がって、大阪と言えば大阪府全体になっている。この実態に合わせた新しい制度をつくっていかなければなりません。制度先にありきではなく、都市の実態に合わせた新しい制度づくり、まさに体制の変更です。
(中略)そこで大阪府域全域で広域行政を担う新しい広域行政体、すなわち大阪都が必要となるのです。(P.192-193)

 都市で稼ぐことが、世界の国家戦略の主流になってきています。ロンドンではサッチャー首相の時代に、グレーター・ロンドン・カウンシルGLC)という広域組織を行革によって壊し、ロンドンを三十二の基礎自治体バラという区とシティだけにしました。しかしロンドン全体を統括する役所がなく、都市として弱体化したことから、ブレア政権のときに大ロンドン庁、グレーター・ロンドンオーソリティGLA)を作りました。国家戦略によって、ロンドンの都市強化のためロンドンの統治機構を作り直したのです。
 今やロンドン市長選挙と言えば、フランスの大統領選挙に次ぐ、ヨーロッパの一大選挙です。(中略)パリでも同様にパリ市と隣接する三県を統合する大パリ構想=グラン・パリ構想が提唱されています(→動画)。台湾でも高雄、台南、台中で、県と市を合併させ、新しい都市をつくりました。一千万人になったソウルも、広域行政をどんどん強化しようとしています。
 世界中で、大都市の力を強めて成長しようという動きが起きているのです。
(中略)都市とは国を引っ張るエンジンです。(P.197-198)

 少子・高齢化社会を迎えて、放っておけば今後は税収も下がっていきますから、(中略)大阪都によってヒト・モノ・カネを大阪に呼び込み、大阪、関西を成長させていかなければなりません。大阪の成長戦略の軸は、中継都市、付加価値都市です。大阪住民以外の人々を観光などで府内を通過させていく。関西国際空港の利用客が大阪で遊び消費し、日本国内を移動する。あるいは、貨物についても大阪を集積地にして全国に配送する。こうした中継都市を目指し、たとえ定住人口が増えなくても税収を上げていく。また、労働人口が減っても税収が上がるように、高付加価値のサービスや製品を生み出していくような都市を築く。
 それに加え、驚天動地の行政改革が必要になります。それも、従来のような個々の施設を対象にするような行政改革でなく、府庁、市役所という組織ごと抜本的に二重行政の無駄を省く取り組みです。
 こうして上がった税収や、行政改革で確保できた財源を、医療、福祉、教育といった住民サービスに還元する。これが、これからの時代を見据えた大阪都構想の都市経営モデルです。(P.225-226

(前略)今までの政治は、リンゴを育てる農園を耕すことに力を入れず、リンゴを渡す話ばかりをしてきました。だから、リンゴはいずれ渡すけれども、いま必要なのは農園の土をしっかり耕すこと、リンゴがなる仕組み、システムをしっかりと作り直すことが大切ですということを、市民の皆さんにどれだけわかってもらえるかが勝負です。土を耕す仕事は地味でしんどい。しかし、大阪の土を今、ここで耕さなければ、大阪だけでなく、日本で、もうリンゴは二度とできなくなります。(P.251-252)

上記に関しては、(僕の)別ブログの「Googleplex & iSpaceship」の記事(「硬直化した日本の「国土」を再編する(もう一度、柔らかく耕す)」)、本ブログの「TPPの賛否」の記事(「今やるべき事は、「新しい仕組みをつくる」という事なのです」)参照。以上です。

大阪市長選挙の投票は来週の11月27日です。今のところ、大接戦のようです。ま、僕が大阪市民ならば、迷わずに「橋下徹」に一票を入れますけど。ではでは(ドタバタ)w。

*1:本ブログの「東京計画2011」補足の記事参照(「東京計画1960」)