「コンパクトシティ」が都市を滅ぼす――暴走する国土交通省(PART2)、そして何もなくなった

先月、地方都市で医療施設や商業施設を街の中心部に集めて「コンパクトシティ」を推進する「改正都市再生特別措置法」が成立した。エリート揃いの総務省とは違って、どうやら国土交通省には頭の弱い人しかいないようだ。国家官僚らは論理とシビアな現実認識を重んじなければならないのに、国土交通省は「コンパクトシティ」にセピア色の夢を見ているようだ。だが、そろそろ起きたほうがいい。

ちなみに、僕は「改正都市再生特別措置法」が成立した翌日に「都市集約によって市民は困窮する――国土交通省の「改正都市再生特別法」の非情」という記事をブログに書いた。タイトルに入れた「暴走する国土交通省」のPART1はこの記事だ。他にも「「コンパクトシティ」の創設は税金の無駄遣いである」という記事も書いている。

さて、約1年半前の話からしよう。これは秋田市で現実に起きている、せつなくて悲しい話である。2012年9月、イオングループの「イオンタウン」が秋田市の郊外に大型ショッピングセンターの出店を計画していることが明らかになった。この計画に秋田市の中心部(秋田駅周辺)の商店街が反対したのは言うまでもない。

更に、秋田市は郊外の開発を抑制して中心部に各種施設を集める「コンパクトシティ」構想を掲げていた。この「コンパクトシティ」構想の中核となる施設の一つが市の中心部に15年の歳月と135億円の事業費(そのうちの約110億円は公費)をかけて建設した「エリアなかいち」であった。この施設には店舗(中核テナントは「サン・マルシェ」)、美術館、交流館、広場、住宅、駐車場等があり、2012年7月に開館したばかりであった。この施設の事業主体である再開発組合の理事長は、郊外に「イオンタウン」が建設されたら客足が奪われるとして、秋田市にこの計画を許可しないよう要請した。この計画は現在も頓挫したままである。

だが、事件は半年前に起きた。2014年1月、「エリアなかいち」の商業施設の中核テナントである「サン・マルシェ」が賃貸借契約を解除して撤退する意向を表明したのである。売り上げが伸びず、赤字が続いていたからである。そして「サン・マルシェ」は同年3月末に撤退した。代替テナントはまだ決まっていない。更に5月中旬には青果店鮮魚店等のテナントの撤退も相次いで、売り場の空きスペースは約4割にも達した。そして昨日(2014年6月4日)、「エリアなかいち」を管理・運営する会社の社長ら非常勤取締役7人が揃って辞任したのであった。

要するに、秋田市の「エリアなかいち」は青森市の「アウガ」の二の舞になったのだ。青森市も「コンパクトシティ」構想を掲げていて、この構想の中核となる施設の一つが市の中心部に建設された「アウガ」であった。だが、思うように客足が伸びず、2008年に事実上の債権放棄に陥った。秋田市青森市と同じ失敗を繰り返しているのである。

これが秋田市で現実に起きている、せつなくて悲しい話である。ポイントをまとめると、秋田市は市内の郊外に建設されるはずだった大型ショッピングセンター(「イオンタウン」)の出店を許可しなかったにも関わらず、街の中心部の活性化(「コンパクトシティ」)の切り札であった施設がわずか2年も経たぬうちに失敗した、ということである。つまり、秋田市の市民は何も得ていないのである。「イオンタウン」も「コンパクトシティ」もどっちも得ていないのである。このままでは秋田市は全てを失うことになるだろう。「そして何もなくなった」では遅い。秋田市は「コンパクトシティ」を諦めて「イオンタウン」の建設を許可するべきである。国土交通省の言いなりになる必要はない。


(画像を追加した。2014/6/6)


Google ストリートビュー(撮影日:2012年10月)より。