米Twitter本社はどこに移転したのか

 
前回の「雑記(2012/7/17)」の記事に続いて、また再び「ギズモード・ジャパン」より。「Twitter本社で働くのは、まるでミュージカル(動画)」(ギズモード・ジャパン、2012年7月19日、→下の動画)の記事が面白い。とりあえず、関連して、(僕の)別ブログの「雑記&まとめ」の記事に載せた、「Centraal Station Antwerpen gaat uit zijn dak!」(→動画)を参照。(僕の)別ブログの「Star House-2 (星型の家-2)」の記事に載せた、「Unexpected performance」(→動画)と、「 Love Lunch! The Musical」(→動画)も参照。あと、季節外れだけど、(僕の)別ブログの「アイコンに擬態」の記事に載せた、「Christmas Food Court Flash Mob, Hallelujah Chorus」(→動画)も参照。しかし、暑い(汗)。仕事のやる気が起きません。と言うか、仕事のやる気が起きないと、ブログの更新は捗るのかも知れません(こらこらw)。少し古い記事だけど、「くそぉ。Twitterで働きたくなっちゃうじゃないか。(動画)」(ギズモード・ジャパン、2010年8月7日、→動画)も参照。以上です(汗)。(追記(2012/7/20)。下記に「【追記】」を付け足しました。)


【追記】

頭がまだぼーっとしてるけど(こらこらw)、少し「都市論」的な話にこじつけると、企業が「どこに本社機能を置くのか」という事は、とても重要です。都市経済学者のリチャード・フロリダは、「The Secret to London's Tech Boom」(The Atlantic Cities、2012年7月2日)の記事で、「A Tale of Tech City」(2012年、→PDFファイル)というレポートから、ロンドン東部のシリコンラウンドアバウト*1を例に、「ハイテク企業の集積地」(tech cluster)が有機的・自然発生的に成長しやすい場所の要因(6項目)を挙げています(下記)。

興味深いのは、上から4番目の「安価である事」(Cheap space)と上から5番目の「ロンドンの都心との近接性」(Proximity)が、明らかに矛盾しているという事ですw。なぜなら、一般的に、大都市の都心に近い土地は、値段が高いからです。ま、だからこそ、都市思想家のジェイン・ジェイコブズは、名著「アメリカ大都市の死と生」(1961年)で、「古い建築が必要だ」(「古い建築」は新しい建築よりも「安価」だから必要だ)と力説したのです。ジェイン・ジェイコブズは、「古い建築」が都心の近くにある事によって、この矛盾を乗り越えられると考えたわけです。

そして、これに対して、前々回の「リチャード・フロリダ「都市の高密度化の限界」を翻訳してみた」の記事で書いたのだけど、都市経済学者のエドワード・グレーザーは、「需要と供給の関係に反している」と批判したのです。低中層の「古い建築」を保存して、ビルの高層化の行く手を阻むと、需要と供給の関係によって(供給量が不足して)、「(不動産の)価格を上昇させる事になる」と、ジェイン・ジェイコブズの論理を批判したわけです。

ま、僕には、両者のどちらが正しいのかは分かりません。(不動産の)価格の決定のメカニズムは、需要と供給の関係に収斂できるほど、単純ではないとは思います。僕は、経済学は詳しくないけど、「外部性」や「ネットワーク外部性」や「不確実性」等々も、都市では起きていると思います*2。「古い建築」を保存する事によって(不動産の)価格が上昇するかも知れないけど、ビルを高層化する事によっても(不動産の)価格は上昇すると思います。

いずれにせよ、前に(僕の)別ブログの「Googleplex & iSpaceship」の記事で少し引用したように、リチャード・フロリダは、著書「クリエイティブ都市論―創造性は居心地のよい場所を求める」(2009年)で、「不動産価格の高騰はイノベーションの妨げになりかねない。」(P.167)と述べているのだけど、この点に関しては、エドワード・グレーザーの考えも同じです。(不動産の)価格は低いほうが望ましいという点に関しては、じつはジェイン・ジェイコブズエドワード・グレーザーも同じなのです。両者の違いは、どのようにしたら(不動産の)価格は上昇しないのかという「手段」の違いであって、「目的」は同じなのです。ジェイン・ジェイコブズは、「古い建築」を保存する事によって、(不動産の)価格は上昇しないと考えていたのに対して、エドワード・グレーザーは、ビルの高さ制限や容積率等の規制緩和をして、ビルを高層化する(供給量を増やす)と、需要と供給の関係によって、(不動産の)価格は上昇しないと考えているわけです。

前述の矛盾がどのようにして乗り越える事ができるのかは、これからますます問われる主要なテーマとなるでしょう。なぜなら、イノベーション(創造)こそが都市の本質であり、都市のエネルギーの源泉であるからです。

さて、冒頭のTwitter本社は、サンフランシスコのここにあります(下図)。築75年の「古い建築」ですw。*3

では、「米Twitter本社が悪名高いテンダーロインに移転した理由 〜新社屋 潜入レポ〜」(週アスPLUS、2012年6月25日)の記事から少し引用すると、「Twitterサービスが誕生したのは2006年6月。2007年には最初のオフィスをサンフランシスコ市内に構える形で本格的にスタートし、その後、サービスの拡大と従業員の増加とともに拠点を移し、今年6月、現在の新オフィスへと移転した。」、「Twitterは現在までに何度か本社を移転しているものの、実はサンフランシスコからは一度も出たことがない。これまではSOMA(ソーマ)と呼ばれる市内の振興開発エリアを中心に移転していたが、新社屋はテンダーロインと呼ばれる、市内でも最も治安の悪いエリアに位置する。」、「Twitterの入居するビル“Market Square”は、かつては“SF Mart”の名称で呼ばれた1937年建立の商業ビルだったが、10年近くテナントもない状態で放置されていたもの。」、「サンフランシスコ市は、このかつて栄えたビルを大幅にリフォームし、急成長で大きなオフィス空間を必要としていたTwitterに7〜9階部分を提供した。世界的企業であるTwitterを中心に新興IT企業を呼び寄せ、荒れ放題だった同エリアの再開発を進めるのが狙いだ。(後略)」との事です。サンフランシスコ市の戦略は、いろいろと参考になるのではないかと思います。

また、リチャード・フロリダは、冒頭の「The Secret to London’s Tech Boom」(The Atlantic Cities、2012年7月2日)の記事で、「ツイッターと他の多くの会社は、シリコンバレー*4よりもサンフランシスコを選んだ。(Twitter and many other companies have chosen San Francisco over Silicon Valley.)」とも述べています。つまり、企業の本社の立地の選択で、大都市の「都心との近接性」(Proximity)がますます主要な要因になってきているという事です。その一方、ま、繰り返しの説明になるけど、既に書いたように、「一般的に、大都市の都心に近い土地は、値段が高い」のです。都市の源泉がイノベーションにあるにも関わらず、イノベーションを促進する環境的な要因の、「安価である事」(Cheap space)と「都心との近接性」(Proximity)が両立しないという矛盾を都市(とくに都心)は構造的に抱えているのです。そして、この矛盾は、とくに「市場原理主義」によって土地の効率的利用が完遂した都市では、原理的に(絶対的に)解決できません。よって、都市の源泉であるイノベーションを促進するためには、前に本ブログの「リチャード・フロリダ「都市の高密度化の限界」を翻訳してみた」の記事の注釈10で書いたような、「非効率」性が必要となるわけです。ま、言い換えると、前述の矛盾は、じつは「非効率」性によって部分的に解決されているという事です。

これからの21世紀の都市計画では、都市の源泉であるイノベーションを促進するために、この「非効率」性を対象化して、理知的に操作するようになるでしょう。僕は、その可能性の一つとして、前に(僕の)別ブログの「Integral Project-1」の記事で書いた、「用途混合型の都市」*5の都市モデルを勝手に考えているのだけどw、ま、それはおいといてw、サンフランシスコ市の戦略のように、前述の矛盾を巧妙にカップリングする(結合する)ような何らかの形での「公的な介入」*6を行う事が、最も実践的だろうと思います。

うーん、想定外に記事が(だらだらと)長くなったけどw、以上です。

念のため、今、この記事を読み返してみたのだけど、重複した内容の文章がやたらに多い(ははっw)。ではまた。

*1:世界有数のIT産業のハブへ・・・英国版"シリコンバレー"が急成長」(現代ビジネス、2011年1月1日)を参照。少し引用すると、「(前略)いまや100社近くのハイテク企業が集まるこの地区は、付近にあるラウンドアバウト(環状交差点)にかけて"シリコン・ラウンドアバウト"と呼ばれている。この地区は不況下でも驚くほどの急成長を遂げ、昨今では米国のシリコンバレーに次ぐハイテク産業のハブとして知られる、ボストンテルアビブなどと肩を並べる存在になりつつある。ラウンドアバウトに集まるのは、ファッション業界向けのソフト制作や3Dに特化した企業など高い専門性をもつ中小企業。起業家らによれば、ここには英語圏で国際的人材を獲得しやすいといったロンドンならではの立地に加え、クリエイティブな若い人材を惹きつける独特の魅力があるという。」との事です。「【英国Tech Cityレポート】 ロンドンIT業界の勢いと日本のCPの将来像」(ケータイWatch、2012年4月27日)も参照。少し引用すると、シリコンラウンドアバウト(Tech City)は、「開発が遅れていたロンドン東部一帯のエリアを指している。開発が遅れているだけに、家賃が安いなどの理由から、ITベンチャーが自然発生的にこの一帯に根付いたとされる。」との事です。本ブログの「未来の巨大都市に住む人々の暮らしはどうなっているのか」注釈11の記事参照(「ウェスト・エンドは高級住宅街で、イースト・エンド(ロンドン東部)はその反対です。」、→動画

*2:例えば、本ブログの「東京は最大都市規模を超過しているのか」(「ある意味で悪循環」)、(僕の)別ブログの「雑記6」(「悪循環なのです」)、「マンハッタンのゆくえ (前)」(「原因と結果の悪循環」)、「ノエル」(「雪だるま」)等々の記事参照

*3:(僕の)別ブログの「Star House-2 (星型の家-2)」の記事参照(サンフランシスコ)

*4:前々回の「リチャード・フロリダ「都市の高密度化の限界」を翻訳してみた」(と注釈6)の記事参照(シリコンバレー

*5:(僕の)別ブログの「フロリダ」の記事参照(「「用途混合」型の都市とは、自己組織化に抗って、宇宙が誕生して間もない状態を「永続」させる夢を見る、という都市なのです。」)。(僕の)別ブログの「雑記&まとめ」の記事参照(「ポイントは真ん中の三層目」、「用途混合」の層)。関連して、本ブログの「鉄道の未来学――幹線の鉄道の未来」注釈4の記事参照(「混合一次用途の必要性」、ジェイン・ジェイコブズ著「アメリカ大都市の死と生」、P.178-P.189)

*6:本ブログの「未来の巨大都市に住む人々の暮らしはどうなっているのか」の記事参照(「(前略)重要な問題は、こんな話とは全く別のものだ。経済的、技術的な開発を締出すのではなくて、それらに門戸を開放し成功に導いた政府を、その生物がどうして発見したか、ということだ。他の星からありがたい助言を受けるまでもなく、この問題は最も緊急でありながら最も注目されていない問題である。」、ジェイン・ジェイコブズ著「都市の原理」、最終章、P.290-291)。本ブログの「丹下健三「建築と都市」――機能主義の限界」の記事参照(「スミス的認識からケインズ的認識への変革」、丹下健三著「建築と都市―デザインおぼえがき」、P.35)。本ブログの「鉄道の未来学――2011年の鉄道とその未来」の記事参照(「「金城湯池」と「公共性」の関係」、猪瀬直樹著「地下鉄は誰のものか」、P.10-11)。関連して、(僕の)別ブログの「都市の非能率性と非実用性」追記1の記事参照(「都市計画は適度に失敗していたほうが(中略)経済が活性化するのではないかと考えてしまう。全然分かりません。」の答え)。あと、前回の「雑記(2012/7/17)」の記事の「【おまけ】」で書いた、ル・コルビュジエ著「パリの運命」(2012年、初版1941年)から少し引用すると、「(前略)大言壮語の中に偉大さはない。建築は真実のエスプリなのだ。真実を正面から見すえよう。必要とされる行動、つまりすばらしい行動の確信がそこから引きだされる。美しき果実が実り、新しい時代の都市がうまれるだろう。恐怖と戦慄、そして「フランス基準」の壁に隠されたイエズス会的な老獪さでの逃避、「ほら、ムッシュー!」「フランス人は個人主義であり……には同意しえない」という主張――つまり公的な利益を私物化する行動やいき方に加担するということ――がすべての提案の道筋を阻んでいる。私たちは言い逃れのための道具一式でその場においてけぼりにされるだろう。都市は(国家のように)金満家や快楽主義者の自己満足のために建設するものでも、怠惰な人や貪欲な者たちに建設させるものでもない。都市は将来の世代のために建設するべきであり、国内で拒絶、抑圧、批難され青白く息たえだえとなった無数の主体や彼らの活力に参加を呼びかけ建設すべきである。都市は各地の技術者、造形家、詩人たちに参加を呼びかけ建設すべきである。都市はフランス人の大胆さ、無謀さ、敏捷さ、激情性、デカルト主義的精神を証明するだろう。それは微笑を絶やさない魅力、義勇、厳密、詩情、感性、優美な精神である。」(P.14-15)との事です。「都市は将来の世代のために建設するべきであり」には賛成。